排泄介助で「今は行きたくない」と言われたとき、予定時刻だけを理由に誘導していませんか。本人の希望と体調を確かめ、聞こえ方、周囲の視線、見守りの必要性を一緒に整えます。声かけから記録まで、職場の個別支援に合わせて確認する手順をまとめます。
排泄介助の声かけと誘導|プライバシーを守るトイレ支援の結論
排泄介助は本人の希望と体調を確認して進めます。声かけを断られたときの確認、ドアや待つ位置への配慮、安全に必要な見守り、できる動作の支援、次の職員へつなぐ記録例を整理します。
- トイレへの声かけは本人の希望と排泄習慣を確かめ、断られた理由を決めつけずに支援方法を相談します。
- ドアやカーテンで視線を遮る配慮と、座位・立位の安定や呼び出し方法に応じた見守りを両立します。
- 排泄の有無だけでなく、本人の言葉、支援した動作、反応、変化の報告先を分けて記録します。
1本人の希望を確認してから声をかける
排泄介助は、本人の希望と体調を確かめるところから始めます。厚生労働省掲載の「介護の特定技能評価試験学習テキスト 改訂2版」は、本人の意思や能力に合う支援、排泄習慣と羞恥心への配慮を示しています。誘導できたことだけを支援の成功とせず、どう過ごしたいかを聞き取ります。
例えば「お手洗いはいかがですか」「お手伝いが必要なところはありますか」と短く確認します。これは編集部が作成した声かけ例で、特定の言い方の効果を保証するものではありません。本人の聞こえ方と理解に合わせ、食堂などで周囲に排泄内容が伝わらない伝え方を選びます。
本人の希望
聞こえ方
周囲への配慮
2断られたときは理由を決めつけない
「今は行かない」という言葉を、そのまま受け止めます。便意がない、寒い、人に見られたくない、動くと痛いなどの可能性は、本人に確かめるための手がかりです。「恥ずかしいからだろう」と決めて誘導を続けず、確認できた言葉と観察した様子を分けます。
次に声をかける時機や方法は、本人の排泄習慣、その時の状態、個別計画に沿って職員間で相談します。普段と違う痛みや体調の変化があれば、次の排泄時刻まで待たず看護職などへ報告します。認知症がある人への関わりは、拒否があるときの声かけも確認してください。
3誘導前に体調と動線を確認する
トイレへの移動、下衣操作、便座への着座など、どの動作に支援が必要かを個別に確認します。本人の訴えと普段との違い、足元や床、手すり、必要な用具を見て、個別計画で決めた介助方法と人数で進めます。画像は場面のイメージであり、身体を支える位置や方法を示す手順図ではありません。
ふらつきや痛みがあり予定した方法では難しい場合は、無理に移動や立位保持を続けず、応援や看護職への相談につなげます。具体的な環境の確認は転倒予防の環境チェックも参照してください。
4見守りとプライバシーを一緒に整える
ドアやカーテン、衣類の扱いを確認し、廊下からの視線や不要な肌の露出を抑えます。厚生労働省が紹介する小松市の排泄ケア事例も、排泄の困りごとは尊厳に関わり、表面化しにくいとしています。本人が話したくない内容を人前で聞き出さず、相談できる場をつくります。
教材の「トイレの外で待つ」例は、すべての人にそのまま当てはめる手順ではありません。座位の安定、急に立ち上がる可能性、呼び出し方法を確認し、個別計画に沿って待つ位置を決めます。外で待てる場合も、必要時にどう呼ぶかを本人と確かめ、見守りが必要な場合は理由を説明して視線の向け方にも配慮します。
視線と露出
必要な見守り
呼び出し方法
5下衣操作はできる部分を待つ
ズボンや下着の上げ下ろしは、本人が望む支援を確認し、安全にできる部分を待ちます。「どこまで自分でできたか」と「どこを手伝ったか」を分けて捉えると、次の職員へ支援内容を伝えられます。
できる動作も体調によって変わります。立位が不安定な人に衣類操作を任せたり、手すりを持てるだけで安全と判断したりせず、座位・立位の状態と個別計画に沿って支援します。自立支援を理由に必要な介助を控えないことも大切です。
6本人の言葉・支援・反応を分けて記録する
排泄時間や尿便の状態に加え、本人の言葉、実際に支援した動作、反応を記録します。「誘導に成功」「拒否あり」だけでは、本人の希望や次に必要な支援が伝わりません。普段と違う状態を報告した場合は、報告時刻・相手・指示や対応も職場の記録方法に沿って残します。
架空の記録例:「10:00 トイレを提案すると『今は出ない』との返答。10:20 本人より『お手洗いに行きたい』と話があり、個別計画に沿って付き添い。排尿あり。ズボンを上げる際、背面のみ介助」。20分後の再確認を一律に勧める例ではありません。実際に確認・実施した内容だけを記録し、状態の評価には根拠を添え、観察事実と分けて職場の様式に記載します。
整理には記事末尾のケア記録テンプレートや申し送りテンプレートを使えます。文章の言い換えは介護記録のNG表現と事実・評価の分け方も参考にしてください。テンプレートへの記入は、体調変化時の報告や対応の代わりにはなりません。
7まとめ
排泄介助では、本人の希望、聞こえ方、見られたくない気持ちと、安全に必要な支援を一緒に確認します。予定した誘導方法に固執せず、本人の言葉と実際の支援を記録し、次の職員が個別計画と照らして判断できるようにつなぎましょう。
8よくある失敗と対策
| よくある失敗 | 対策 |
|---|---|
| 予定時刻だからと断られても誘導を繰り返す | 本人の希望と状態を確認し、再確認する時機や支援方法を個別計画に沿って共有します。 |
| 小声で話すだけで配慮できたと考える | 本人が聞き取れることと、周囲に内容が伝わりにくい場所・伝え方を両方確認します。 |
| プライバシーを理由に全員を一人にする | 座位・立位の状態、呼び出し方法、必要な介助を踏まえて見守る位置を決めます。 |
| 「拒否あり」「一部介助」だけで記録を終える | 本人の言葉、介助した具体的な動作、反応を残し、変化を報告した場合は相手と対応も記載します。 |
9よくある質問
排泄介助で声かけの声量はどうすればよいですか?
本人の聞こえ方に合わせ、近くで短く伝えます。小声にすることだけを優先せず、周囲に排泄内容が伝わりにくい場所や伝え方を選び、本人が理解できたかを確認します。
トイレ誘導を嫌がる場合は?
予定時刻だからと繰り返し迫らず、本人の言葉を聞き、痛みや不快感、行きたくない理由を確かめます。理由は推測で決めつけず、個別計画とその時の状態に合わせて再度の確認時機を職員間で共有します。体調変化があれば声かけの工夫だけで済ませず、看護職などへ報告します。
プライバシーのためにトイレの外で待つべきですか?
一律に外へ出るとは決められません。本人の希望、座位の安定、立ち上がり時に必要な介助、呼び出し方法を確認し、個別計画に沿って見守る位置を決めます。見守りが必要な場合も、視線や肌の露出を抑える配慮を続けます。
参考・出典
- 介護の特定技能評価試験学習テキスト 改訂2版(2025年3月、本文13・14・16・115・159–164頁)(公益社団法人日本介護福祉士会(厚生労働省掲載))
- 排泄ケア(コンチネンスケア)による在宅医療・介護連携の推進(石川県小松市の取組事例、2026年3月27日)(厚生労働省)



