立ち上がりやトイレへの移動前に、本人の状態とベッド周り・足元・動線を確認します。決められた介助方法でも、その日のふらつきや痛みによって見直しが必要です。危険がある場面では安全確保と連絡を優先し、その後の記録・申し送りまでつなげます。

この記事の要点

介護現場の転倒予防チェック|ベッド周り・動線・声かけの基本の結論

転倒予防の環境確認を、本人の状態・個別の介助方針と合わせて整理。ベッド高さ、車いすブレーキ、履物、夜間の動線に加え、ふらつき時の安全確保・連絡と、その後の記録例を紹介します。

  • 環境確認は本人の状態と個別の介助方針に合わせます。チェックが済んでも転倒を完全に防げるわけではありません。
  • ベッド高さや支持物、車いすのブレーキの効き、足元、夜間の動線を確認し、合わない点は多職種で見直します。
  • ふらつきが増えたら安全確保と必要な連絡を優先します。記録の完成や定時の申し送りまで対応を待ちません。

1動き出す前に、本人の状態と介助方針を確認する

厚生労働省の事故対応ガイドライン(2025年11月)は、転倒対策を一律にせず、身体機能・行動・生活環境に応じて考えるよう示しています。環境の点検だけで、すべての転倒を防げるわけではありません。

介助前には本人の意向を聞き、普段との違いと、計画で決めた介助方法・用具・必要な職員数を確認します。「いつもの方法」で難しい様子があれば、そのまま進めず担当者へ相談します。声かけは立ち上がり介助の確認ポイントも参考にしてください。

本人の状態

個別の介助方針

動く前に声かけ

2ベッド高さと支持物を、動作に合わせる

ベッド端に座る場合は、足底が床につくか、座位が安定しているかを確認します。テクノエイド協会の解説では、端座位の安定と立ち上がり・移乗では高さを考える条件が異なります。「全員同じ高さ」「低いほど安全」と決めず、本人の状態と移乗方法に合わせてリハビリ職等と調整します。

つかまる場所も確認します。ベッドのサイドレールを立ち上がり用の手すりとして当然に使えるとは考えず、対応するベッド用グリップなど、用途に合う支持物かを説明書と個別方針で確認します。図は確認箇所のイメージで、用具の配置や介助手順を指定するものではありません。

3車いすはブレーキの操作だけでなく、効きと足元を見る

移乗前は車いすの駐車ブレーキをかけ、確実に効くかを施設の点検手順で確認します。テクノエイド協会のCase 9では、調整不足、タイヤの空気圧低下や摩耗が、車いすが動く要因として挙げられています。レバーを動かしただけで確認を終えず、効きが悪い場合は使用を中断して担当者へ連絡します。

フットサポートと足が接触していないか、本人の動きに合う車いすの位置かも確認します。Case 7には、慌てて車いすを引いた際の接触例があります。部品の操作は機種の説明書に沿って行い、急いで車いすを動かさないと支えられない場合は、介助方法そのものを見直します。

4履物と夜間の動線を確認する

履物のかかとを踏んでいないか、脱げやすくないか、サイズが合っているかを見ます。国立長寿医療研究センター掲載の訪問薬剤管理指導ガイドでは、履物とともに、コード・床の物・めくれた敷物・暗い通路を確認項目にしています。本人の履きやすさも聞き、合わないものは家族や担当職員と相談します。

夜間はベッドからトイレまでの足元が見えるか、手すりやナースコールを本人が使えるかを確認します。排泄や睡眠の状況も共有し、照明・見守り機器は本人ごとの方針に合わせます。転倒を恐れて本人の動きを一律に制限する対応にはしません。

5危険時は安全確保と連絡を先に行う

ふらつきや痛みが増えて予定した方法での移動が難しいときは、無理に歩行や立位を続けず、安全確保と応援要請を行います。施設の手順で看護職・責任者へ連絡し、次の介助方法を確認します。転倒が起きた場合も、救命・安全確保と迅速な初期報告が先です。緊急時は施設の救急対応手順で動き、記録の完成や定時の申し送りを待ちません。

その後、いつ・どこで・何をしていたか、見た状態、実施した対応、連絡先と時刻、受けた指示、未確認の点を記録します。目撃していない転倒の経緯や、薬が原因だという推測を事実として書かず、観察と判断を分けます。

6記録例を、次の確認につなげる

次は書き分けを示す架空例で、対応の標準手順ではありません。「14:10、トイレへ向かう立ち上がり時に体幹が右へ傾いた。本人より『ふらつく』との発言。移動を中断し、職員の介助でベッド端に着座。応援を呼び、14:12に看護職Aへ報告。看護職到着まで職員Bが付き添った」。実際に観察・実施した内容に置き換え、その後の状態と指示・実施結果も追記します。

再発防止の整理はヒヤリハット報告の共有メモへ、次の担当者へ渡す内容は申し送りの書き方へつなげます。記事末尾のヒヤリハットCSVは空欄の整理用テンプレートです。緊急連絡、施設の正式な事故報告、自治体への報告を置き換えるものではありません。個人情報は職場の保存・閲覧ルールに従って扱います。

7よくある失敗と対策

よくある失敗対策
ベッド高さや用具配置を全員同じにする本人の身体機能と動作に合うかを確認し、個別の介助方針と説明書に沿って調整します。
ブレーキのレバーを動かしただけで終える効きと足元を確認し、異常があれば使用を中断して担当者へ連絡します。
ふらつきを記録して、定時の申し送りまで待つ危険時は安全確保と必要な連絡を先に行い、その後で観察・対応・連絡内容を記録します。
架空例や推測した原因をそのまま記録する実際に見たこと・行ったことに置き換え、推測や未確認事項を区別します。

8よくある質問

転倒予防で移動前に見る場所はどこですか?

本人の体調と個別の介助方法を確認したうえで、ベッド高さ・支持物、車いすのブレーキの効き、履物、床の物やコード、照明、ナースコールの位置を見ます。本人が使える配置かも確認し、チェックが済んだことだけで安全と判断しません。

ふらつきが増えたときは、先に記録しますか?

危険がある場面では移動や立位を無理に続けず、まず安全確保と応援要請を行い、看護職・責任者へ施設の手順で連絡します。転倒が起きた場合も救命・安全確保と迅速な初期報告を優先し、記録の完成や定時の申し送りを待ちません。その後、見た状態、実施した対応、連絡時刻・相手・指示を記録します。

ベッドは低くしておけば安全ですか?

一律に低くすればよいわけではありません。ベッド端に座るときの足底接地、立ち上がりや移乗の方法、本人の身体機能に合わせて高さを確認します。端座位・立位移乗・座位移乗・リフト使用では条件が異なるため、個別の介助方針と用具の説明書に沿い、合わない場合はリハビリ職等へ相談します。

参考・出典