排泄介助から食事介助へ移るとき、同じ利用者のケアでも手袋を着けたまま続けていませんか。標準予防策は感染症の有無にかかわらず行う基本です。手洗いと消毒の使い分け、手袋を外す場面、体調変化の共有を、日常業務の区切りに沿って確認します。
介護現場の感染対策|標準予防策とケア前後の手指衛生の結論
標準予防策では、手袋の使用と手指衛生を組み合わせます。手洗いと消毒の使い分け、同じ利用者でもケアを切り替える際の手袋交換、清潔物の配置、体調変化を報告するときの要点を整理します。
- 手指衛生は利用者に触れる前後だけでなく、清潔な処置の前や、体液・周囲の物品に触れた後にも行います。
- 同じ利用者でも汚染した手袋で別のケアを続けません。外した後は手指衛生を行い、次のケアに手袋が必要なら新しいものを使います。
- 目に見える汚れやノロウイルスが疑われる汚物の処理後は、消毒だけで済ませず、石けんと流水で洗います。
1標準予防策は、感染症の有無にかかわらず行う
標準予防策は、血液、汗を除く体液・分泌物、排泄物、粘膜、傷のある皮膚などを、感染の可能性があるものとして扱う考え方です。感染症と診断された人だけを対象にせず、日常のケアに組み込みます。
厚生労働省「介護現場における感染対策の手引き 第3版」は、手指衛生と、接触や飛散のリスクに応じた手袋・マスク・目の保護具・エプロン等の使用を示しています。発熱、咳、下痢などで感染症が疑われるときは、標準予防策に加える対策を看護職・感染対策担当者に確認し、診断がつくまで放置しないことが大切です。
すべての利用者
接触・飛散に備える
疑いの段階で相談
2手指衛生のタイミングと、手洗い・消毒の使い分け
手指衛生を行うのは、利用者に触れる前、清潔・無菌的な処置の前、血液・体液等に触れた後、利用者に触れた後、利用者の周囲の物品に触れた後です。ケアの開始と終了だけでなく、ベッド柵や周囲の物品に触れた場面も確認します。
同手引き24頁では、通常はアルコールへのアレルギー等がなければエタノール含有消毒薬を用い、目に見える汚れがある場合は液体石けんと流水で洗うとしています。手洗い後は使い捨てのペーパータオル等で手を乾かし、共用の布タオルは使いません。手荒れが強い場合は、使用する製品も含めて専門家に相談します。
ノロウイルスが疑われる嘔吐物・便の処理やおむつ交換の後は、手袋をしていても石けんと流水による手洗いが必要です。厚生労働省のノロウイルスQ&A(Q16)は、消毒用エタノールをその代用にしないよう説明しています。洗える場所や物品が不足している場合は、自己判断で省略せず管理者へ共有します。
3同じ利用者でも、汚染した手袋で次のケアを続けない
手袋の表面はケア中に汚染されます。手袋を着けたまま記録端末、ドアノブ、清潔な物品に触れたり、別の利用者の介助に移ったりしません。同じ利用者でも、排泄介助から口腔ケアなどへ切り替えるときは、使用した手袋を外して手指衛生を行い、必要なら新しい手袋を着けます。使用済みの手袋は再利用しません。
同手引き26〜27頁では、手袋を理由に手指衛生を省かず、外した後は原則として液体石けんと流水で洗うとしています。おむつ交換では使い捨て手袋とエプロン(または長袖ガウン)を用い、1ケアごとに取り替えます。食事介助の前、特に排泄介助から移る際にも、石けんと流水による手洗いを徹底します。
職場で動線を確認する例は「使用後の物品を所定の場所に収める」「防護具を施設の手順で外す」「手指衛生を行う」「次のケアの物品を清潔に準備する」です。これは業務の区切りを点検するための整理で、着脱技術の全手順ではありません。防護具の組み合わせに応じた外し方は施設の研修・マニュアルで確認します。
4清潔な物品を、汚れた手袋で取り出さない配置にする
使用前のタオルや手袋と、使用後のリネン・廃棄物は置き場を分けます。ケア中に予備の物品を探して棚や箱に触れることがないよう、必要な物品と使用後の収容先を開始前に確認します。排泄ケアの声かけや準備は、プライバシーを守るトイレ支援も参照してください。
次の勤務でできる点検例は、手洗い場の液体石けん・ペーパータオルの補充、交換用手袋の取り出し口、使用後物品を運ぶ経路の3点です。単にワゴンの上段・下段を決めれば安全と考えず、清潔な物に触れずに片付けられるか、実際のケアの流れで確認します。配置は施設の感染対策担当者と調整します。
嘔吐物・便で汚れた場所は、手指用の消毒薬を一律に流用せず、病原体と対象物に応じた施設の処理手順・薬剤の使用方法に従います。嘔吐物の処理や環境消毒の詳細は記事末尾の厚生労働省Q&Aを確認し、担当者へ相談してください。
5体調変化は、記録を書き終える前に報告する
発熱、咳、下痢、嘔吐だけでなく、いつもより反応が乏しい、食事が進まないなどの変化も観察します。同手引き28〜30頁は、日頃の状態との比較、看護職・医師への報告と記録を示しています。看護職がいない時間帯や訪問先でも連絡先に迷わないよう、報告先をあらかじめ決めます。記録の完成を待って連絡を遅らせないようにします。
以下は編集部が作成した架空の記録例です。「9時20分、水様の便を1回確認。本人は『お腹が痛い』と話す。9時25分に看護職へ報告。以後の対応は確認した指示を追記する」。時刻、観察した状態、本人の発言、報告先、対応を分け、実際に確認していない内容や感染症名を埋めません。
引き継ぐ項目は申し送りの書き方や記事末尾の申し送りテンプレート(CSV)で整理できます。CSVは日常の共有用で、感染発生時の施設全体の一覧や行政への報告様式の代わりではありません。個人情報は職場の保存・閲覧ルールに従って扱います。
6まとめ|手指衛生を省かずに済む業務の区切りをつくる
手袋交換と手指衛生を個人の注意だけに任せず、物品の置き場、ケアを切り替える場面、連絡先をチームで確認します。まずは排泄介助から次のケアへ移る流れを、施設の手順と照らし合わせて点検しましょう。個別の感染症への対応や防護具の選び方は、看護職・感染対策担当者の指示に沿って調整します。
7よくある失敗と対策
| よくある失敗 | 対策 |
|---|---|
| 同じ利用者なら汚染した手袋のまま別のケアを続ける | 使用した手袋を外して手指衛生を行い、次のケアに必要なら新しい手袋を着用します。 |
| 目に見える汚れやノロウイルスが疑われる汚物処理後も、消毒だけで済ませる | 石けんと流水による手洗いを行います。手袋をしていても省略しません。 |
| ケア中の手袋で、交換用手袋や清潔なタオルを取り出す | 開始前に必要物品と使用後の収容先を準備し、汚染を広げない取り出し方を確認します。 |
| 記録を仕上げてから体調変化を報告する | まず定められた相手に連絡し、観察した状態・報告時刻・確認した対応を記録します。 |
8よくある質問
手袋をしていれば手指衛生は不要ですか?
手袋は手指衛生の代わりにはなりません。着用前と外した後にも手指衛生を行います。厚生労働省の介護現場の手引きでは、外した後は原則として液体石けんと流水で洗うとしています。汚染した手袋のまま記録端末や次の利用者に触れないようにします。
同じ利用者のケアなら手袋を交換しなくてもよいですか?
同じ利用者でも、排泄介助で使った手袋のまま口腔ケアなど別のケアを続けません。使用した手袋を外して手指衛生を行い、次のケアにも手袋が必要なら新しいものを着用します。交換用の物品を清潔に取り出せる配置も確認します。
手洗いをアルコール消毒で代用できますか?
場面によります。通常はアルコールへのアレルギー等がなければ手指用の消毒薬を使えますが、目に見える汚れがあるときは液体石けんと流水で洗います。ノロウイルス対策では、消毒用エタノールは石けんと流水による手洗いの代用になりません。施設の手順と製品の使用方法を確認します。



